資格の取り方

様々な認定資格を持つ先輩薬剤師に、資格取得の経緯や業務内容をインタビューしました。

外来がん治療認定薬剤師(APACC)

回答薬剤師:主任薬剤師(入職4年目取得)

外来がん治療認定薬剤師とはどのような資格ですか?

 外来がん治療認定薬剤師(APACC)は、日本臨床腫瘍薬学会(JASPO)が認定する資格認定制度で2014年より設立された比較的新しい資格制度です。

 がん薬物療法分野における資格としては医療薬学会認定のがん専門薬剤師及びがん指導薬剤師、日本病院薬剤師会認定のがん薬物療法認定薬剤師等がありますが、日本臨床腫瘍薬学会の外来がん治療認定薬剤師の特徴として他の認定資格で必要な研修施設での研修や勤務経験の規定がなく、また実務経験年数も3年以上で申請が可能であることから実務経験年数の短い若手薬剤師でも目指せる資格となっています。

何故この資格を取得しようと思われたのですか?

 私がこの資格取得を目指したきっかけは、元々がん治療の分野に興味があったことと、前施設での上司からの勧めがあったからです。

 国立病院機構は異動を伴う組織ですが、本資格は研修施設の規定がないことから、どの勤務施設においても取得を目指すことが可能です。また、自分が興味を持ってその施設で取り組んだことの結果として関連する資格を取得するということは以後の業務においても自分の糧になると思います。

 私は入職後4年目でAPACCの資格を取得し、その後異動先の鹿児島医療センター(当院)において診察前薬剤師外来業務の立ち上げ、及び薬剤師外来でのがん患者指導管理料ハ(薬剤師が算定可能な抗がん剤の指導における診療報酬点数)の算定開始など資格を活かした業務分野の拡大に携わることができました。

 現在は院内における抗がん剤関連業務の管理、がん患者への指導、当院が主催する免疫チャックポイント阻害薬による免疫関連有害事象のマネジメント向上を目的とした多施設合同Webカンファレンスの運営などを中心的に行うと共に、鹿児島県病院薬剤師会のがん薬物療法・緩和ケア対策委員として県下のがん薬物療法に携わる後進の育成に努めています。

今後の目標を教えてください。

 がん薬物療法は経口抗がん薬を含めその多くは外来へと移行してきており、2020年度診療報酬改定においても連携充実加算(患者にレジメンを提供し、患者の状態を踏まえた必要な指導を行うとともに、地域の薬局薬剤師を対象とした研修会の実施等の連携体制を整備している場合の診療報酬点数)の新設など、病院だけでなく調剤薬局や地域医療を含めた連携が重要視されています。

 今後は、より一層薬薬連携及び施設間連携の向上を図り、安全ながん治療を提供できるよう取り組んでいきたいと思います。

糖尿病療養指導士

回答薬剤師:主任薬剤師(入職3年目取得)

糖尿病療養指導士とはどのようなことを行う医療スタッフですか?

 糖尿病療養指導士は、糖尿病治療にもっとも大切な自己管理(療養)を患者さんに指導する医療スタッフです。高度でかつ幅広い知識を持ち患者の糖尿病セルフケアをサポートします。

 その主な活動は、糖尿病教室(糖尿病薬の特徴や副作用の違い、副作用の対策などについて集団指導)、服薬指導(個人指導)、糖尿病チームでの回診(治療方針や生活に関する情報の共有、治療中の問題点に関する相談)などです。

 また、糖尿病治療で入院している患者さん以外に、基礎疾患に糖尿病を患っている患者さんや糖尿病予備軍の患者さんがいます。手術や検査を実施するために、血糖コントロールが必要となる場合もあります。そのような患者さんの薬物療法について他の医療スタッフからの相談を受けることもあります。

糖尿病療養指導士を取得するきっかけは何ですか?

 私が糖尿病療養指導士を取得しようと思ったのは、既に取得していた先輩でした。患者さんの生活スタイルや食事の好みなどを細かく把握した上で服用忘れのための工夫を提案している姿を見て「先輩の様にもっと深く患者さんに関わりたい」と思いました。

 また、実際に糖尿病患者さんへ服薬指導を行った際に食事や運動についての相談をされることも多く、この様な経験が食事療法や運動療法についてより深い知識を持ってアドバイスを行う事ができる糖尿病療養指導士の取得するきっかけとなりました。

糖尿病療養指導士を取得して毎日の業務で心がけていることは何ですか?

 糖尿病の治療の目標は「健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)の維持、健康な人と変わらない寿命の確保」です。そのために合併症の予防・良好な血糖コントロール状態の維持が必要となります。治療として「食事療法」「運動療法」「薬物療法」など生活習慣を変える事が必要であり、これらの正しいセルフケアを継続して行う事が重要となります。

 しかし今までの生活習慣を変える事は難しく、また、変えた行動を新しい習慣として身につける事はとても大変だと感じます。患者さんのセルフケアをサポートするためには多職種での情報共有や連携が重要になるため、チームでコミュニケーションを密に取るよう心がけています

 糖尿病療養指導士を取得したことで患者さんにより深く関われることにとてもやりがいを感じています。今後も、少しでも多くの患者さんのより良い血糖コントロール、合併症予防のために活動していきたいと思っています。

認定CRC(治験コーディネーター)

回答薬剤師:主任薬剤師(入職7年目取得)

今の業務内容について教えてください。

 私は入職5年目から治験や臨床試験の業務に携わっています。主な業務は、治験や臨床試験に参加される患者さん対応のほか、医師や看護師、その他様々な職種の施設スタッフとの連絡調整、製薬企業(治験依頼者)とのデータや書類のやり取り・管理、契約関連の手続き等、薬剤師という薬の専門業務や知識の枠にとどまらない幅広い業務があります。

 治験臨床試験を実施するには、多くの人が関わり、とりわけ実施医療機関においては患者さんを中心としたチーム医療が重要です。私はそのチームをつなぐ役割を担っています。

認定資格を目指したきっかけ、そして資格の概略を教えてください。

 私が認定取得を目指したのは治験臨床試験業務を始めて2年が経過した頃。一通りの業務は経験した私でしたが、自分にはまだ多くの知識やスキルが不足しているという漠然とした自覚と不安がありました。そのため、今の自分の状況を知り課題を明確化し、次へのステップアップの足掛かりにしたいと考え、日本臨床薬理学会認定CRCを取得しました。

 治験臨床試験は、国が定めたGCP「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」に準拠する必要があり、治験臨床試験実施の際に守るべきルールとして理解しておかねばなりません。この認定は、それを理解し治験臨床試験の適正かつ円滑な実施に貢献できる人材を認めるものです。

資格を取得してからのエピソード等あれば教えてください。

 認定取得以降は、数施設で治験業務に従事し現在に至ります。施設の規模や特徴は様々で、治験業務においても細かい手順や方法が異なるため、今もなお未経験の問題課題に日々直面します。そのような時には、これまでに得た基礎知識と様々な経験をもとに対応策を考えたり、同じ業務に携わる先輩や同僚に相談したりなどして問題解決に取り組んでいます。

 自分が関わった治験や臨床試験を通して、患者さんから感謝や喜びの言葉をいただいたり、新しい薬や治療法が承認され世の中に出てきた時の喜びと達成感はひとしおです。

 また、治験では、国際共同治験など海外と並行して試験を行うことも多く、データ報告や資料提出、メールなどで英語に触れる機会が多くあります。英語が大の苦手だった私が、業務を経験するうちに抵抗感がなくなったのもこの仕事のおかげです。

 未来の新しい薬や治療法の開発に関わることができ、また、業務の中で英語に接する機会も得られる等、この業務ならではの魅力の一つと言えます。多くの経験を積み、直面する新しい問題を乗り越えながら、進化し続ける自分でありたいと日々業務と向き合っています。

感染制御認定薬剤師

回答薬剤師:主任薬剤師(入職5年目取得)

この認定資格を取得するに至ったきっかけは何ですか?

感染を扱わない病院はないから感染でもやってみない?
当時の薬剤部長に誘われたことがきっかけだったと思います。チーム医療の一員として活躍される先輩に憧れはありましたが、感染がしたいなと考えていたわけでなく本当にタイミングだった様な気がします。何もわからないまま医師、看護師、検査技師などと協議することとなり、勢いでチーム入りしてしまいとても不安に感じていました。

認定取得後の活動について教えてください。

 不安は感じていましたが、この多職種との交流が大きな糧となり、現在、感染制御認定薬剤師として院内の感染制御に携わっています。当院の感染制御では、大きく2つの業務を行っています。従来から必要とされる①院内での感染を制御(コントロール)する業務、近年注目されている②抗菌薬の適正使用を支援する業務です。

 ①では、院内で感染を広げないために多職種で対策をたてています。病院は免疫力が低下した患者が集まりやすく、また、職員も感染源に暴露しやすい環境です。院内で新規の感染症を作らないために、環境のチェック、環境整備マニュアルの作成を行っています。一見、薬剤師の活躍の場があまりないように思われがちですが、消毒“薬“をはじめとしてワクチン関連や注射薬(無菌調製)の運用整備など薬剤師としての知識を求められる場面は多くあります。

 ②では、感染治療に深く関わることができます。抗菌”薬“はやはり感染症治療において最も重要です。投与量、組織移行性、抗菌薬の感受性、他の薬物との相互作用、点滴であればルートの評価、副作用モニタリングetc.もちろん薬学的な知識だけでは不十分で医師や検査技師などと協議して適切な抗菌薬治療を目指しています。抗菌”薬“について一番精通しているのは薬剤師であり、この業務では中心的な役割を担うことが求められています。患者の治療方針決定から妥当性、効果の判定まで一つの疾患に対してここまで深く関われる業務は他にないと考えています

日頃の業務で感じていること、薬剤師を目指している方に伝えたいことなど教えてください。

 感染制御の業務では幅広く深い知識を求められ、時にはきつい思いもしています。自分もより良い感染制御を目指して日々、自問自答しています。ですが、たくさんの職種と関わり、自分を磨けるこの業務にやりがいを感じて取り組んでいます。感染に関する知識は多くの施設、多くの日常業務で必要とされています。

 感染に少しでも興味がある方はもちろん、漠然となにかやりたいなと考えている方も、是非、一緒に感染制御を盛り上げていきましょう。

NST(栄養サポートチーム)専門療法士

回答薬剤師:主任薬剤師(入職7年目取得)

この資格を取得しようと思ったきっかけはなんですか?

 私が一年目の時に配属となった施設は、栄養サポートチーム(NST)専門療法士の認定教育施設でした。そこで、同じ病棟を担当されていた薬剤師の先生が、NSTのメンバーとして活躍されており、上司の勧めもあって認定資格の必須要件となる40時間の研修を受けることができました。

 カンファレンスやラウンドに参加する中で、専従看護師をはじめ他職種の方々から学ぶことが多く、いつの日か自分も同じように活躍できたらと思い資格取得を目指しました。

資格を取得するにはどのような条件が必要ですか?

 申請資格として、5年以上、医療・福祉施設に勤務し、栄養サポートに関する業務経験を有することや、日本臨床栄養代謝学会主催の学術集会およびセミナーなどに規定回数以上参加し、認定教育施設で実地修練を修了していることなどがあります。

取得されてからの活動を教えてください。

 資格取得後、数年間はNSTの業務から離れていましたが、現在はNSTのメンバーとして週に1度の回診とカンファレンスに参加しています。経腸栄養剤や静脈栄養剤の選定など介入目的はさまざまですが、当院では褥瘡チームと連携し、褥瘡を保有する低栄養患者の栄養支援にも取り組んでいます。

 また、NST委員会や院内職員向けの勉強会も定期的に開催されており、他職種と情報共有を行うことで栄養療法の知識向上に努めています。そして日本臨床栄養代謝学会認定のNST専門療法士認定教育施設として資格取得を目指している方を対象に講義を行っています。

日常の臨床の中で思うことについて教えてください。

 低栄養状態は筋肉量が低下することで活動量が低下し、さらなる食欲低下を招くといった悪循環に繋がるだけでなく、誤嚥性肺炎などの感染症や転倒・骨折リスクの増加、創傷治癒の遅延などが起こりやすくなります。このため、継続的に栄養状態の評価を行い栄養管理が行われることが重要であると考えています。